達者で暮らせ
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うんちゃかうんちゃかしてたら電話がかかってきたので、
てっきり原稿の催促だと思ったらやっぱり催促だった。

なんでも大学が創立125周年だとかで、
漫研OB展やるからなんか描けというお話だ。
このような末席を汚すたぐいのOBに声をかけてくれるのは嬉しいし、
喜んで参加したかったのだが、
間に合わないと思って諦めてたのだ。

しかし若者へのメッセージをテーマに描けってゆわれても、
とくに思い浮かばんのですが。
遺伝子を後世に残さない身としては。
泉水の言葉を借りればDNAに逆らってます私。

ええ、察しのよい方はお気づきのように『重力ピエロ』読了いたしました。
注意して手すきのときに読み進めてたのに、
やっぱり後半1/3くらいは一気読みになってしまった。
力のある文章なのだ。
目下『アヒルと鴨のコインロッカー』に手をつけるべきか否か迷ってるとこ。
修羅場過ぎてからの方が賢明かもしれん。

読んでいてふと気づいた。
私が腹を立てると口を利かなくなるのは、親父の遺伝だ。

父はおとなげない理屈屋である。
その時点で十分DNAは受け継がれているのだが、
小賢しい私に比べて父の性格ははるかに素直で可愛げがある。
もっとピュアに子供っぽいのだ。
だから頭に来るとブンむくれてしまう。

私が目にする怒りの対象は常に母であった。
三人姉妹の末っ子でお嬢さん育ちの彼女は多分におっとりしており、
頑固者の長男であった父を苛つかせるところがあったのだろう。
絶対に手をあげることはなかったが、
ただとにかく黙りこくってしまうのである。

高校の頃、何が原因か知らないがこの夫婦間絶交が数日に及んだことがあった。
呑気な母もこれには弱って私に相談を持ちかけたものだ。
「お父さんがもう何日も口利いてくれないのよ」

こっちはそんな事態にはまったく気づいておらず、仰天した。
父は子供にはきわめて普通に接していたのである。
要するに「おれが腹を立ててるのはお前に対してだけだ」という、
母へのアピールなのだ。
なんだかうっとおしい。困った人である。

むろん出来の悪い次男坊が仲裁に役立てたはずもなく、
それでも大した事態に進展することもなく夫婦仲は元に戻った。

当時はなんて幼稚な人だろうかと呆れていたが、
自分もそれなりに幼稚な大人に育ってくると何となくわかってきた。

父は父親であるから、日常的にばかな息子たちを叱り付けていた。
が、その際の怒り方は母に対するそれとは違うのだ。
悪さをすれば容赦なく怒鳴りつける。
一度きりしかないが張り飛ばされたこともある。
子供の叱り方なのだから当然かもしれないが、
おそらく職場での部下に対する叱責も同様であったろう。

父がヘソを曲げて口を利かなくなってしまうのは、母に対してだけだったのだ。
甘えていたのである。

この子供っぽい性癖を、うっかり私も受け継いでしまっていることに気がついた。
厳密には自分の性格としてはとうに承知していたが、
親父の遺伝だということに思い当たった。

自己弁護を兼ねて当時の父をすこし擁護すると、
あれはかまって欲しくて拗ねているだけではない。
言葉が出てこないのだ。

わからず屋の相手に腹を立てているのなら、
わかるまで説得あるいは罵倒してやろう。
それでもわからないようなら、
面倒だからもう何もなかったように笑顔で接してやろう。
もしくは永久に仲違いしてしまおう。

でも、わかってくれるはずの相手にわかってもらえなかったとき、
自分を傷つけるはずのない相手に傷つけられたとき、
何をどう言えばいいのかわからなくなってしまうのだ。
だから口を利けなくなる。
けど、それはよっぽど気を許した相手にしかやりません。

父はただ純粋に母に甘えていたのだ。
そのようなややこしい愛情表現をされる側にしてみればたまったもんじゃなかろうが。
途方に暮れるだろうし。

だからまあ、私はなるべく気をつけてます。
自分で気が付くとなんだか情けなくなるので。
それでもやっちまったらごめんよ。

思いついたぞ、若者へのメッセージ。
歯みがけよ。宿題やれよ。頭洗えよ。

達者で暮らせ。
【2007/03/18 02:54】 | 未分類 | page top↑
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