
ラーメン屋に恰幅の良い男たちが入ってきた。
「チャーシューメン。あと中華そば2つ頼むわ」
佐々木健介と高田延彦とゆうたろうの3人連れといった塩梅だ。
ひとり仲間はずれがいるのは三つ揃いを着てるからで、
コスチュームと人相は裕次郎もどきだがガタイは上田馬之助程はある。
固有名詞がすげえ適当なのは格闘技詳しくないからです。すみません。
とにかく隣にそういう集団に座られてカウンターは一気に狭くなった。
内臓脂肪は大丈夫か皆。
リーダー格はゆうたろう丈である。
上着を脱いでベスト姿になると、やおら店員に切り出した。
「ここでHっていうのが働いてたと思うんだけどさ」
ははあ。切り取り屋だよこの方々。
イノセントなお客様のために補足すると、
切り取り屋というのは借金の取り立てを専門にする業者さんである。
当然ながら通常レベルの督促では出てこない。
彼らが召還される状況は相当にヤバいと考えてよろしい。
危うしH氏。
声をかけられた篠井英介似のバイト君が答える。
「H君は12月で辞めて引っ越しちゃいましたね」
うお。あからさまに逃亡者っぽいぞ。
「そうですか…今どこにいるかってわかんないかな」
「わかんないですねえ」
「どうにしかして連絡取れないかな」
手掛かりを得るべく、ゆうたろう丈は詳しい事情を説明し始めた。
それによると借金抱えて逃げちゃったのはH氏本人ではなく、
彼と一緒に住んでいる人なのだという。
当人の足取りがまったく掴めないため同居人のH氏から攻めにかかったらしい。
「ただ、俺らが探してることがHに知れるとそいつに話しちゃうからさ。
そしたらまたいなくなっちゃうんで、
わかんないように連絡付けられないかなあ」
ここで注目すべきは、彼らがちゃんとラーメンを頼んでる点である。
お客さんなのだ。
コワモテの男三人、聞き込みするだけなら別に注文する必要はない。
しかし飲食店である以上、タダで情報を得るわけにはゆくまいという判断がそこにある。
いかにもな仁義の通し方だ。
口調こそタメ口だが決して居丈高ではなく、終始フレンドリーな態度を崩さない。
それでいて有無を言わさないところがあるのは、さすがの貫禄である。
ちょっと感心した。
そしてこのような男達に追われるH氏とその同居人の行く末に、
すこし寒気を覚えた。
そんなゆうたろう丈であるが、
ふと隣の私が食べているのがつけ麺であることに気づいた。
見ると他の客もたいがいつけ麺を食べている。
ちょっと慌てた様子で店員に聞いた。
「ねえ、ここって何。つけ麺が有名なの?」
「ええ、まあそうですね」
「そうなのかー」
あまりの落胆っぷりに篠井店員が助け舟を出した。
「まだ麺茹でてるとこなんで変えられますよ」
「えっ、本当? じゃあつけ麺に変えてもらえる? チャーシュー大盛りで。
…おう、お前らもチャーシューどうだ?」
ご機嫌なリーダーに薦められた若手ふたりはおとなしく遠慮していた。
ここのチャーシューはデカくて硬くて難儀なので遠慮して正解だと思う。
もっとも彼らの注文が運ばれてくる前に私は食べ終わってしまったので、
切り取り屋さんがチャーシューに難儀したかどうかは知らない。
H氏の動向もわからない。
最近は人まちがえて話しかけたり、ぱんつ脱ぎかけて尻まるだしで転んだりしています。
今日はこの後取材です。