信長様の忍びです
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旅の帰り途のお供。

重野先生というのはものすごい誠実な男である。
麻雀打っててもメンツごとに手牌を分けて並べてしまい、
シャンテン数がバレバレだったりする人であった。
最近はそんなこともないけれども。

作家と作品は本来別個に論じるべきものだが、
一方で不可分の要素でもある。
この4コマで綴られた戦国絵巻は、
たぐいまれなる誠実さに彩られている。

史実に題材を取った漫画はそれこそゴマンと存在する。
ギャグやショート、4コマも少なくない。
それらの多くは教科書的な歴史上の人物像、
つまり既にイメージの固まったキャラを使ってパラレルワールド的展開をみせる、
いわば「歴史のパロディ」である。
二次創作と言ってもいい。『天地人』なんかその典型ですな。

『信長の忍び』もそのひとつとして考えて問題はない。
けれども何かがちょっと違う。
冒頭に記したようにバス旅のお供と軽く考えて読み始めたのだが、
いつのまにか車窓からの風景も何もかもそっちのけで没頭してしまっていた。
中央道乗ったのに全然気づかなかったぜ。
料金所をETCでスルーしたせいもあるだろうけどな。
さらに、あろうことか2回ほど泣かされた。

友人知人の創作物に泣かされるというのは相当に気恥ずかしいものだが、
本当だから仕方がない。
ちくしょー。

単に歴史上の人物を茶化しているだけでは、読み手の心を動かすことはできない。
私はこれを重野なおきという作家の誠実さに由来すると考える。
信長と彼を取り巻く人々を、敵将も含め深い愛情をもって描き切っているのだ。
マムシの道三LOVE。

むろん人物造型だけではない。
歴史考証家の谷口克広氏が解説の筆を執っているという事実は、
彼の史実に対する真摯な姿勢を裏付けるものである。
「ページごとに笑いを誘う四コママンガでありながら、
歴史上の誤りがごく少ないのは、
作者の重野氏が、基本的な知識を身に付けているからだろう」とは、
なかなか考証家には言えないセリフだ。
「ごく少ない」の部分は谷口氏の矜持というものよ。

そして何よりも私が頭が下がるのは、彼の漫画に対する誠実さである。
得がたい資質だと思うんだよ、ほんと。

*

手牌を3枚づつ分けて並べていた昔の重野先生であるが、
といって決して負けていたわけではない。
その調子でまっすぐリーチ行って突っ込んで、
なんだかんだでツモりあがってしまう。

今現在私が愛用しているiPod Shuffleは、
数年前の麻雀大会で彼が上位入賞した際の賞品である。
「出歩かないから使わないなあ」
「だったら、くれ」
「えーでもせっかくの賞品だから」

しかし彼はちゃんと私の軽口を覚えており、
しばらく後に「やっぱり使わないんで、あげます」つって、くれた。
そういう人である。

いや別にカツアゲする先輩じゃないです私。
あと物もらったから褒めてるわけでもないです。

念のため。
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【2009/07/07 10:23】 | 未分類 | page top↑
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