黄金夢幻城殺人事件@下北沢・小劇場『楽園』
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『明智小五郎対金田一耕助』という本がある。
古今東西の名探偵たちが行間を自在に踊る、極上のパスティーシュ集である。

探偵小説のパスティーシュというやつは、
対象に精通していることに加え、トリックの案出やプロットの組み立てなど、
さまざまな条件を満たさなければ書けるものではない。
まして複数の探偵を俎上に載せるとなれば、
膨大な知識と筆力、そして超絶の技巧が必要とされる。
新本格派探偵作家芦辺拓は、
本書においてこのヘラクレス的難業を実に軽やかにクリアしてみせた。

ところでポアロのファーストネーム、
エルキュールはヘラクレスのフランス語読みに由来している。
この古代ギリシアの英雄に倣って、
晩年のポアロが十二の難事件に挑んだのが『ヘラクレスの冒険』。
ポアロものでは一番好きな短編集であるよ。

話を戻して。
そんな芦辺さんがお芝居の脚本を書き下ろされた。
題して『黄金夢幻城殺人事件』。
演ずるは劇団あぁルナティックシアター。
http://aalunatic.com/
これは観ないとおさまらんでしょう。

山奥の古城に一夜の宿を借りる破目になった少女・弥生と、
その連れの青年・天平。
城はかつての銀幕スター夢宮幻太郎の終の棲処だった。
そして奇しくも同日、
幻太郎の遺産相続を巡って呼び集められていた7人の関係者たち。
弁護士森江春策立ち会いのもと故人の遺言が明らかになったとき、
事件はしずかに幕を開けた…。


などと紹介してみると非常にクラシックな展開っぽいが、
なにしろ芦辺さんとこの劇団のコラボレーションである。
劇団サイトより改めてあらすじ引用。

「山奥の古城に展開される謎の連続殺人! 
次々と無残な最期を遂げるアクの強い面々が狙うのは、
莫大な遺産相続の権利か、城に眠る伝説のお宝か。
それは作者にもまだわからない…。
黄金夢幻城に招かれた可憐な美少女の運命やいかに、
名探偵の推理の行方は果たして― 
そして(うっかり忘れてたけど)犯人はいったい誰?
一度見ただけではまだ足りない。二度、三度と来るともっと面白い。
ひよっとして毎回結末が違うかも? それは見てのお楽しみ! 」

http://www.aalunatic.com/stage/090623ogon/index.html


だいたいこっちの方が雰囲気的に正しいです。
前日に引き続き観劇なさっていた原作者の芦辺さん自身が、
「こんなに毎回お話が違うんだ。千秋楽はもう犯人ちがうかも」と
愉しげに口走る始末。

進行役は弁士・唐沢俊一先生。
先に挙げた『明智小五郎対金田一耕助』ハヤカワ文庫版の解説もお書きです。
弁士とは言ってもむろんナレーターや黒子に甘んずるお人ではない。
積極的に舞台に干渉し、役者陣を意のままに操る。
ときどきは巻き添えも食らう。
予想はしてたけどそれ以上にハマり役でした。

2月の『黄昏モンスターズ』でクールビューティなオノヨーコを演じた、
鈴木希依子嬢は今回峰不二子的ポジション。
凛とした芝居がやはり格好いい。ボケもかますし。
NC赤英さんとの息が合う合わないを超越した掛け合いが楽しい。
吉澤純子嬢のもってけセーラーふくには驚いたよ。

個々の役者さんに関するものも含め、
あまり感想を連ねると即ネタバレに繋がってしまうのが残念だ。
謎解きだからなあ。
一見複雑な構成はしかしさすがに芦辺さんのお仕事。
最後にはきっちりすべてのピースがはまります。
興味のある方はご自分の目で確かめるのがいいと思うよ。

私の見た内容と違うかもしれないけどNE!

6/28(日)まで。
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【2009/06/27 05:47】 | 未分類 | page top↑
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