水商売の神様と光の塔
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職業欄の選択肢に自由業というのがある。

たぶん私の業務内容はそれに該当するのだが、
なんだか不安定で好ましくないイメージがあり、
チェック入れるのに躊躇することがある。

てめえの仕事に誇りはないのかと言われても困る。
漫画家やイラストレーター等の肩書であれば堂々と名乗れるが、
自由業に就職した覚えはないからな。

そもそも自由業って何やねんな。
思い立って辞書を引いてみた。
幾つか当たってみて、目から鱗がゴソッと落ちたのが新明解国語辞典の以下の記述。

「一定の雇用関係によらず、独立に営む職業。
医者・弁護士・著述家などの職業」

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いやあ知らんかった。
医者や弁護士って自由業者だったんかい。
いきなりすんごい社会的地位高まってるんですけど。
フリーターと大差ない印象なのに自由業。

もっとも、これはあくまで新解さんの御託宣である。
同じ三省堂の大辞林は、
「時間や雇用契約にしばられない職業。著述業・弁護士など」に留めており、
医者は入ってない。
だいたい大病院の医者って勤め人だし、開業医は開業医で自営業みたいな気もする。
弁護士も弁護士会除名されると仕事できないしな。

われわれ著述業のたぐいは、個人的には自由業っていうより水商売である。
水商売の定義までゴタク並べるのは面倒なので、これは言い逃げにしておく。

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新橋の烏森口を出た小路の奥に烏森神社は位置している。
稲荷様の他に芸事の神である天鈿女命を祀っており、
芸者衆をはじめ新橋の店々の崇敬を受けて久しい。

天鈿女命というのはアメノウズメであり、
例の天岩戸の際に愉快な踊りでアマテラスさんをおびき出した女神様です。

打ち合わせの帰途、新橋を通ったので烏森神社にお参りしてみた。
水商売の神様に商売繁盛祈願である。
二礼二拍一礼を済ませ、顔を上げると右手におみくじの箱が見えた。

烏森神社の御籤は「心願色みくじ」と称するもので、
赤:恋愛、黄:金運、青:仕事、緑:健康の四種類のジャンルで占い、
結果と一緒に渡された願い札に望みを記して祠に縛っておくと叶う、云々。
いや、引いてないんで詳しいことは知らんのです。
引きたかったんだけど引けなかった。

箱の前に女性がひとり、しゃがみこんでいたからである。

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気分でも悪くなったのだろうか。
心配になってそっと様子を窺ってみた。

やや派手ながら小奇麗な身なりは、この界隈のお店の人なのだろう。
それが箱の置かれたテーブルに両手をかけたまま、
下を向いてしゃがんでいる。
大丈夫ですか、と近寄りかけて足を止めた。

肩が震えて激しい嗚咽の声が漏れている。
おねーちゃん、号泣してはってん。
右手におみくじ握りしめて。

どういう状況なのか。
何かものすごい泣きたくなるような占いの結果だったのか。
あるいはおみくじを見た彼氏が血相変えて逃げ出し、
取り残されてひとり涙にくれておられるのか。

詳しいことは何もわからないが、
見ず知らずの男が気軽に干渉していい雰囲気ではない。
そのまま静かに神社を出た。
入れ違いに彼女と同業らしい黒いブーツの女性が石段を上がって行った。

今現在本殿前で進行中の愁嘆場は別として、
ほんとに地域の人たちに大事にされてる神社なんだな、と思った。

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田町での打ち合わせが終わった頃には夜の帳が落ちていた。
ラッシュの三田線に乗るのが面倒で日比谷通りを歩き始める。
ふと見ると東京タワー。
吸い寄せられるように電波塔に向かってしまう私ではあった。

なんかね。
光の塔がだんだん近づいてくる感じが面白くてさ。
もちろん近づいてるのはこっちなんだけどさ。

タワーのお膝元まで辿りついて満足すると再び日比谷通りに戻り、
てくてく有楽町まで歩いて地下鉄乗って帰った。
その途中で新橋を経由したって次第。

動き出した企画あり。
詳細はまた追って告知致します。
まずは仕事じゃ。
【2009/03/08 23:12】 | 未分類 | page top↑
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