神無月の蝶
陽射しは眩しかったり入道雲がもくもくしていても、四季はちゃんと巡っている。
いつのまにかすっかり秋だ。
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撮影地は前回と同じ小石川である。
虫の姿はだいぶ少なくなってきたが、それでもこの時期ならではの皆さんの顔も見られた。

ヒガンバナの黄色いのが残っていた。
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前回更新時に触れたが、彼岸花の幽玄なのはまったくあの真紅に起因するものなので、このように山吹色だとのかんぞうやきつねのかみそりと大差ない美しい野の花である。
美しいことに変わりはないのでとくに問題はありません。

重要な秋の顔のひとつはアキアカネ。
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この時期には群舞がみられる。ちょっと前の空を賑やかしていたウスバキトンボと違い、休むのが大好きなので撮影は容易。
寄ってみるとなかなかユーモラスな表情が見られる。

一方、同じポピュラーな"赤とんぼ"でも、この時期に顔まで真っ赤になってる連中はナツアカネだ。
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ややこしいことに夏場にはまだそんなに朱に染まっておらず、黄色いなりをして山の方を飛んでいる。
秋になると赤ら顔になって低地に攻めてくるってえ寸法よ。なんだか物騒だな。

やまなしの古木にこんもり丸くなっているのはヤドリギの茂み。
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15年ほど前は上の一個だけだったのが今では大小いくつかのマリモが宿っている。
ヤドリギといえばねっとりとした実をつけるので有名だが、ここのマリモが結実しているのを見たことはない。
知らぬ間に花や実をつけてるのかな。なんだか悔しいな。

すっかり東京にも定着してしまったツマグロヒョウモンの顔。
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複眼にぽつんと見える瞳っぽい点は偽瞳孔だ。詳しくはずかんハチのコラムを読むといいよ。

おなじみのアオスジアゲハ。
いくら見慣れていても、この薄青い輝きが視界を掠めると「あっ」と毎度喜んでしまう。
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実はこれも元々南方系の蝶だったのが、街路樹としてのクスノキの需要の拡大に伴って分布を北に広げたとの噂がある。
幼虫の食草なんですねクスノキ。

今年も指先にとめましたアキアカネ。
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何のおもてなしもできんが気のすむまでゆっくりするがいいさ。

シオンの花にやってきたベッコウハナアブ。
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わらしべ長者がこんなのを持って歩いてたらみかんと交換するにやぶさかでないかも。いやーみかんにもよるかな。

フジウツギの花穂でなかよく吸蜜中のツマグロヒョウモンたち。
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雄同士にしては平和な雰囲気だ。雄同士ゆえに食事に勤しんでいられるだけかもしれんが。

ツマグロヒョウモンは雌の方がちょっと派手な色味を身に纏っている。
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昆虫界では比較的珍しい例のような気もするが、専門家ではない身ゆえ断言はできない。
おしゃれな女の子だ。

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樹に生っている眺めはあんなに見事なのに、地べたに落ちると壮絶な厄介ものになるイチョウの実。
ええうっかり踏んじゃいましたとも。
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宮沢賢治にいてふの実という清冽な印象を残す短編があるが、あれギンナンの話だよなと思うとなんだか異臭が漂ってしまって困る。

整った樹形が好まれ植えられるイイギリは、結実した眺めもまた美しい。
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近所にあった町工場の傍で毎年真紅のビーズを鈴なりにしており、秋冬には楽しみにしていたものだ。
工場が閉じた今は同じ場所にイイギリの樹はなく、かつての樹高よりはるかに高いマンションが聳え立っている。

秋の風物詩といえば、毎年九~十月頃にふらりと小石川にやってくるお客さんがいる。
アサギマダラだ。
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以前、ここで晩夏に山の方で出会った一頭を紹介した。
その後、秋風が立つ頃になると東京近辺に現れるのだ。
トンボの皆さんのような大部隊での移動ではない。このへんで見かけるときはだいたい単独飛行である。
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実はこの日、小石川に来たときにいきなり目の前を飛んでゆく本種に出会っている。
一応キク科の花が好きなのだが、これらの写真にもあるように特に花に止まるわけでもない。
決まったあたりをぐるぐる飛び回り、「ぼちぼち疲れたかいの」なタイミングでそのへんに翅を開いて休む。
気まぐれなことおびただしく、どこに行けば会える、写真を撮れるというのがいまいち不明瞭だ。
最初の邂逅を僥倖として諦めるしかないかと思っていたら、帰途にもう一度出くわすことに成功した次第。
しかもかなりいい距離で止まってくれた。嬉しい嬉しい。
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薄い部分が浅葱色だから浅葱斑だよ。

嬉しがってずーっと撮っていたら、通りすがりの紳士に「チョウですか?」と声をかけられた。
アサギマダラがいる旨を告げると、おおっ渡りをする蝶ですね と目を輝かせてカメラを取り出す。
しばしおっちゃんふたりで美麗なモデルさんを撮りまくっていた。

お付き合いありがとう。
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終始紳士的な態度で接して下さったおじさまにも感謝だ。

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大きなショウリョウバッタを驚かせないように寄って1枚。
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ショウリョウが精霊であり、お盆の精霊流しに由来することを知ったのは大人になってからである。
そんなさだまさしな感じはしないな。顔が長いくらいか。

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ヒヨドリジョウゴの実。赤い実は秋の眺めだな。
じきにからすうりも赤くなる。

「赤くなりますか!」
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自販機にもすっかりあたたかい飲料が並んだ。
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キンモクセイもいつの間にか終わって、ここから冬まではきっと駆け足。
【2015/10/11 00:41】 | ネイチャー | page top↑
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