空気のなくなる日
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1910年、ハレー彗星が地球に何度目かの訪問をこころみた。

これは史上最大の大接近といわれ、
天文学者はその尾の中を地球が通過するであろうと予言した。
彗星の尾が猛毒物質を含むことから、
地球上の生命に甚大な被害がおよぶことが懸念され、
さまざまな噂が乱れ飛び、ひとびとは狂奔した。

この不安は日本においては
「地球上の空気が5分間だけなくなる」というかたちをとった。
自転車のタイヤ内のチューブの空気なら5分はもつだろう。
そう考えたお金持ちたちはチューブの買い占めにはしった。
同様の考えから氷ぶくろの需要がにわかに高まり、
その値段は数百倍に高騰した。
余裕のないものたちは洗面器に顔を沈め、息をとめる練習にあけくれた。

そんな当時のひとびとの混乱をもとにえがかれた小説が、
岩倉正治『空気のなくなる日』である。
1947年に発表され、こども用の文章読本にも収録された有名な作品であり、
読んだ記憶のある人もおおいだろう。

しかし100年後の今、この物語を
"根も葉もないうわさにてんてこまいになる、
むかしのひとたちのおはなし"
と読み解くことはできまい。

民俗学者の宮田登は、
「民俗は形を変えて再生産されてゆくもの」(『妖怪の民俗学』)と述べた。
おそらく100年後も200年後も、私たちの本質はこんなだ。
そのことをふまえた上で対応してゆかなければならない。

わかってるのは自分だけだという傲慢に陥ることなく。

なお、1910年当時の報道を知りたい方はこちらを参照されたい。
http://www.geocities.jp/planetnekonta2/hanasi/halley/halley.html
まあその、なんというか、いろいろですよ。
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【2011/03/21 15:03】 | 未分類 | page top↑
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