FC2ブログ
空気のなくなる日
blog110321.jpg
1910年、ハレー彗星が地球に何度目かの訪問をこころみた。

これは史上最大の大接近といわれ、
天文学者はその尾の中を地球が通過するであろうと予言した。
彗星の尾が猛毒物質を含むことから、
地球上の生命に甚大な被害がおよぶことが懸念され、
さまざまな噂が乱れ飛び、ひとびとは狂奔した。

この不安は日本においては
「地球上の空気が5分間だけなくなる」というかたちをとった。
自転車のタイヤ内のチューブの空気なら5分はもつだろう。
そう考えたお金持ちたちはチューブの買い占めにはしった。
同様の考えから氷ぶくろの需要がにわかに高まり、
その値段は数百倍に高騰した。
余裕のないものたちは洗面器に顔を沈め、息をとめる練習にあけくれた。

そんな当時のひとびとの混乱をもとにえがかれた小説が、
岩倉正治『空気のなくなる日』である。
1947年に発表され、こども用の文章読本にも収録された有名な作品であり、
読んだ記憶のある人もおおいだろう。

しかし100年後の今、この物語を
"根も葉もないうわさにてんてこまいになる、
むかしのひとたちのおはなし"
と読み解くことはできまい。

民俗学者の宮田登は、
「民俗は形を変えて再生産されてゆくもの」(『妖怪の民俗学』)と述べた。
おそらく100年後も200年後も、私たちの本質はこんなだ。
そのことをふまえた上で対応してゆかなければならない。

わかってるのは自分だけだという傲慢に陥ることなく。

なお、1910年当時の報道を知りたい方はこちらを参照されたい。
http://www.geocities.jp/planetnekonta2/hanasi/halley/halley.html
まあその、なんというか、いろいろですよ。
blog110321b.jpg

スポンサーサイト



【2011/03/21 15:03】 | 未分類 | page top↑
| ホーム |