世界中で何人が一緒に驚いてくれるか
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まったく自信のない、ものすごい個人的な衝撃の事実。

「岩波文庫版ファーブル昆虫記を、
林達夫と共訳している『山田吉彦』の正体はきだみのるだった」

むしろ誰ひとり驚いてくれない方に自信があるな。
興味ない人はなんのこっちゃさっぱりだろうし、
この方面に詳しい人には周知の事実だろうし。

昆虫記の方は置いといて、
きだみのるってのは昭和20~40年代に活躍した風変わりな作家・社会学者です。
その放浪の生涯のうち数年間を東京都南多摩郡恩方村の廃寺で過ごし、
『気違い部落周游紀行』の名でルポルタージュを発表して話題を呼びました。

出版コード的に相当危険なタイトルですが、
毎日出版文化賞を受賞した名著で、私も最近の版を所持しております。
念のため申し添えると、この場合の部落は純粋に集落と同義であり、
今日のメディアが忌避するようなニュアンスは一切含みません。
戦後復興に邁進する帝都に厳然と存在した山村の生活を、
ソルボンヌ仕込みのエスプリを交えた文章で綴った興味深く面白い一冊です。
機会があればぜひご一読を。
読めば村はさておき筆者の方も相当変だったことがよくわかります。

そんな奇人きだ先生は生涯何人かの子供を授かっており、
うちひとりの非嫡出子の少女は、
友人だった岩手県の小学校の先生に引き取られ育てられました。

このガッコの先生こそが後の作家・三好京三の若き日の姿で、
三好は自分たち夫婦と奇人の娘とのいきさつを『子育てごっこ』として発表、
第76回直木賞を受賞し文壇デビューを飾ったのでした。

『子育てごっこ』は名匠今井正の手で映画化され、
教師夫妻を加藤剛・栗原小巻、少女を牛原千恵が演じております。
私はこの映画を中学か高校の頃に見ており、
牛原千恵の凄さと同時に、
夫婦に子供押しつけてさっさといなくなる、
加藤嘉演ずる頭ボサボサの奇怪な老人の姿が忘れられませんでした。

あまりのことに一緒に見ていた親父に「あれは何だ」と聞くと、
「きだみのるという実在の変人をモデルにした登場人物だ」と教えてくれた。
「それは何者か」
「『気違い部落』を書いた男である」

これが私ときだみのるとのファーストコンタクトだったってえ寸法。
接触してないけど。
そして大人になって書店で『気違い部落』に出会って購入し、
なるほどこれがあの怪老人の文章かと感じ入っておったわけです。

だのに。

『子育てごっこ』できだみのるの名を知るずっと以前、
小学生の頃すでに私は彼の文章に触れていたのだ。
そう、『昆虫記』で。

これはもう大ビックリですよ。
心底個人的な超ミニマム大ビックリ。

ただし岩波文庫版の昆虫記の訳文は間違っても小学生向けとはいえず、
中途で挫折してんだけどね。
現在は新版で10分冊にまとめられてるから、
この機会に読みなおしてみようかな。

ふと気付いたけど、
加藤剛&加藤嘉の絡みって野村芳太郎版『砂の器』と同じだ。
また、きだみのる作品の方も1957年に『気違い部落』のタイトルで、
伊藤雄之助主演で映画化されております。
ソフト化はまず期待できないものの劇場ではまれに上映されるようなので、
こちらもいつか見てみたいものだよ。

なお恩方村は昭和30年をもって八王子市に編入、地図上から消滅してしまいました。
つまんないの。

*

6月20日、オイラの生まれた日。相武紗季も生まれた日。
そしてもうひとり、
同じ誕生日だった友人のために献杯して頂ければ幸甚です。

また来年のこの日まで一年間、
ふにゃふにゃとゆるぎなく立っていたいと思います。
押忍。
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【2009/06/20 00:04】 | 未分類 | page top↑
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